PowerPointをMarkdownに変換する:スライドに埋もれたアウトラインを掘り返す
どんな資料も、最初はアウトラインとして生まれます。誰かに3部構成の主張があり、それぞれに根拠が要り、 そこへブランドカラーと余白たっぷりのテンプレートが着せられていく。.pptxとして受信箱に届くころには、 その骨格はシェイプの座標と重ね順、そして2019年以降誰も開いていないスライドマスターの下に埋もれています。
PowerPointをMarkdownに変換すると、その骨格を掘り返せます。スライドのタイトルは見出しになり、 本文プレースホルダーの箇条書きは、実際に指定されていたインデントレベルのままネストしたリストになります。 スライド上に描かれた表はパイプ表になります。出てくるのは、その資料がもともとなろうとしていた文書—— しかもLLMが推測なしに頭から通して読める形です。上の変換ツールに.pptxをドロップすれば数秒で終わります。 無料、登録不要、終わったあとには何も残しません。
.pptxの正体
.pptxはXMLを詰めたZIPアーカイブです。中にはスライド1枚につき1つのXMLがあり、それぞれがシェイプの フラットな一覧を記述しています。タイトルプレースホルダー、コンテンツプレースホルダー、浮いているテキストボックスが いくつか、画像、場合によってはグラフ。重要なのは、その一覧が読み順ではなくz順だという点です。 PowerPointは「このテキストはあのテキストの後に来る」とは記録しません。記録しているのは 「この箱はこの座標の、この層にある」です。
これは変換の実務にひとつだけ、はっきりした形で効いてきます。テンプレートのタイトルと本文プレースホルダーに 中身が入っている、きちんと作られたスライドなら出力はほぼ完璧です。プレースホルダーには意味的な役割が 付いているからです。一方、テキストボックスを11個ドラッグして見た目を整えただけのスライドでは、 ファイルに格納されている順——たいていは作成順であって、視線が動く順ではありません——で読まれます。 左の段が右の段の後ろに回ることもあります。致命的になることは稀ですが、変換した資料が微妙に順序どおりに 読めない原因の第1位はこれです。
pptxをMarkdownに変換すると、構造はどう対応づくのか
ここが理解しておく価値のある部分です。フラットなテキストではなくMarkdownを選ぶ理由は、結局すべてここにあります。
- スライドのタイトルは見出しになります。各スライドのタイトルプレースホルダーが見出しに 変わるので、目次が勝手に手に入ります。モデルに「3章の主張は何か」と聞けば、実際に3章を見つけられます。
- 箇条書きはネストを保ちます。PowerPointは本文プレースホルダーの段落ごとにインデント レベルを持っています。それがそのままネストしたMarkdownのリスト項目に対応するので、下位の論点が 同じ重みの行の壁に潰れず、親の下に従属したまま残ります。
- スライド上の表はパイプ表になります。「挿入 > 表」で作った本物のPowerPointの表オブジェクトは XMLに行とセルを持っているので、きちんと再構成されます。料金プラン、比較表、ロードマップの表は そのまま生き残ります。
- スライドの並び順は保たれます。PowerPointが曖昧さなく持っている順序情報は資料の並び順だけで、 それが出力の背骨になります。
- 発表者ノートは独立したブロックとして、対応するスライドに紐づいた形で出てきます。 なぜそこが肝なのかは、この下で説明します。
結果として、60枚の戦略資料は、スライドごとに見出しがあってその下に根拠が並ぶ、たどりやすいMarkdown文書に なります。これはモデルが得意とする形です。学習データの大半がもともとその形をしていたからです。
中身が本当に載っているのは発表者ノート
スライドは意図的にスカスカです。画面には6語、話すのは3分。見えている部分だけを変換すれば、6語が手に入って 3分が消えます。資料の要約がしばしば漠然としたバズワードの塊になって返ってくるのは、これが理由です。
ノート欄は、発表者が理由を書いた場所です。第3四半期についての但し書き、2案目を却下した理由、まだ確定して いないからスライドに載せなかった数字。それをスライドの隣に並べてMarkdownに出せば、モデルは主張と根拠の 両方を受け取れます。自分が作ったわけではない資料を要約させるなら、このページに書いてある他のどの話よりも、 この一点が答えの質を変えます。
出てこないもの
限界についても正直に書いておきます。プレゼン資料は、たいていの形式より制約が多い相手です。
- 画像の中の文字には手が届きません。アーキテクチャ図をFigmaから書き出してPNGとして 貼ったのなら、その中のラベルはピクセルです。このツールはOCRをかけないので、その言葉は出力に そもそも存在しません。資料に貼られがちな表のスクリーンショットも同じです。
- グラフのデータはグラフではありません。ネイティブのPowerPointグラフは、数値を 埋め込みワークシートという、見えている絵とは別の場所に持っています。軸ラベルもデータ点も、 読み解けるテキストとしては出てきません。その数字が重要なら、元の表計算ファイルを ExcelをMarkdownに変換 して両方貼ってください。
- SmartArtは賭けです。SmartArtは描画されたシェイプとは別にデータモデル側にテキストを 持つので、取れるものもあれば、どの箱がどこにつながっていたか分からない断片として出てくるものもあります。 5段階の工程図が、孤立した名詞5つになって届くこともあります。
- アニメーションと段階表示は意味を持ちません。4つの箇条書きを1つずつ見せて溜めを作る スライドは、4つ同時に存在する箇条書きに変換されます。タイミングに依存した論——見せる瞬間、 間を置いてからのオチ——は完全に平坦になります。たいていは問題ありませんが、たまに自分でオチを先に 言ってしまっているように読めるスライドが出てきます。
- デザインは消えますし、それは意図どおりです。色、フォント、ロゴ、画面切り替え。 どれも言語モデルが使える情報を運んでいません。
Markdownを選ぶとき、選ばないとき
資料の形が重要ならMarkdownです。カンファレンスの講演を記事に起こす、研修資料をオンボーディング ドキュメントにする、今期の戦略資料を前期のものと節ごとに突き合わせる、元の流れをなぞった構造的な要約を作らせる—— どれも、中身を掛けておくための見出しが必要です。
言葉さえ取れればいいなら PowerPointをプレーンテキストに を選んでください。共有ドライブ上の資料全体に検索インデックスを張る、埋め込み用にチャンクを切る、 ノート欄から話の筋を粗い書き起こしとして抜き出す。こうしたパイプラインでは、見出しの記法は ただの重しにしかなりません。
ページ上部の形式切り替えは、選択済みのファイルをもう一方のページへ引き継ぎます。両方で変換して 見比べるのに、2回アップロードする必要はありません。
実践的なコツ
- 変換の前に、資料をアウトライン表示(表示 > アウトライン表示)で開いてみてください。そこに出てくるものが、 おおむねきれいに変換される範囲です。アウトラインに出てこないものは、浮いたテキストボックスか画像の中に あるので、挙動が読みにくくなります。
- 貼り付ける前に出力下のトークン数を確認してください。資料は見た目よりずっと軽いのが普通で、 100枚の資料が10ページのPDFよりトークン数で小さいこともあります。スライドは文字をほとんど 持っていないからです。つまり、何本かまとめて食わせられる場面が多いということです。
- スライドの要点が図の画像になっている場合は、変換後のMarkdownにその図が伝えている2、3文を直接 打ち込んでください。どんな回避策より速く、モデルが必要としているものはそれで揃います。
- 変換した複数の資料を、それぞれ最上位の見出しの下に連結する方法は、四半期同士の比較や ベンダー同士の比較でよく機能します。
よくある質問
PowerPointの資料をMarkdownに変換するには?
上の欄に.pptxをアップロードすれば、スライドごとにMarkdownのセクションとして返ってきます。スライドのタイトルが見出しになり、本文がその下の箇条書きになります。無料、1ファイル50MBまで、アカウント不要。資料をリポジトリやWikiに置ける形にするには、これが一番速い方法です。
プレーンテキストではだめなのですか?
資料はすでに構造を持っていて、Markdownはその構造を保てるからです。スライドのタイトルが見出しになるので、資料のアウトラインが、ざっと眺めたり畳んだりリンクを張ったりできるアウトラインのまま残ります。テキストに平坦化するとタイトルは本文の箇条書きと見分けがつかなくなり、いちばん残しておきたかった情報がそこで失われます。
.pptは使えますか、それとも.pptxだけですか?
.pptxだけです。古いバイナリの.pptは、先にPowerPoint、Keynote、Googleスライドのいずれかで保存し直してください。どれでも現行形式に書き出せますし、この用途に関しては変換で失われるものはありません。
資料をドキュメント化する手段として使えますか?
初稿としては優秀で、完成稿としては不適格です。全スライドのテキストが正しい順序で、見出しも保たれた状態で手に入る——面倒な部分は片づきます。できないのは、箇条書きの断片を文章にすることです。それはもともと発表者の仕事であり、その材料はノート欄にあります。
画像や埋め込み動画はどうなりますか?
どちらも抽出されません。出力は資料のテキストの中身なので、全面に写真を1枚敷いただけのスライドは、タイトルだけになって終わります。意味をビジュアルで運んでいる資料はMarkdownにするとスカスカに見えますが、それは実際に入っていた文字の量を正直に映しているだけです。
ツールキットの残り
資料が単独で回ってくることはめったにありません。資料はレポートを参照し、レポートは表計算を参照し、 その表計算は誰かのエクスポートから来ています。 File2Txt は対応形式をすべて1ページで扱いますし、目的が決まっているなら レポート用のPDFをMarkdownに変換、 その裏にある文書用のWordをMarkdownに変換、 一式がまとめてアーカイブで届いたならZIPをMarkdownに変換へ 直接どうぞ。
コードやWebの中身が相手なら、 GitHubリポジトリをテキストに変換するツール、 ページをMarkdownに取り込むWeb2Txtがあります。 PowerPoint固有の話ではなく一般論のほうが読みたければ、 LLM向けに文書を整える方法のガイド にまとめてあります。
Repo2Txtを開発・運営しているのは v12hero、 プライバシー最優先のネイティブアプリとWebアプリを作る独立系デベロッパーです。